SLVCCCがいくら超低電圧とはいえ、プレート電圧を3V程度まで上昇させたとしても文句は来ないでしょう。何しろトランジスタでさえ9V乾電池で動作させているのですから。

ところが多くの小信号増幅回路はバイアス電圧が2V程度となっているため、3V以上の深いバイアスでは直線性があまり良くありません。

例えばシャープカットオフ管6AU6で、プレート電流が0,8mA程度になるようG1電圧とG2電圧を変化させて測定すると、バイアスが−3Vを越す深めの動作点においてgm値の急変が観測できました。

そこで、Gm変動の緩やかなリモートカットオフ管6SK7の特性を観測してみると、かなり実用性があるようなので実験回路を組んでみました。


 


SLVCCCは出力インピーダンスが高いので12BH7Aによるバッファを接続しました。上の回路でトータルのゲインはOUT1、OUT2それぞれ50倍となっています。

バイアス1とバイアス2をじっくり調整した結果、10kHzの歪率特性およびf特は下のグラフのようになりました。値はOUT2のものですが、OUT1でも同じです。


               




下の写真が良く調整した10kHz:50VrmsにおけるOUT1とOUT2の特性で、オシロ上で位相を逆転し重ね合わせるとぴったり一致し、1つの波形のように見えます。三角波からはこの電圧でも直線性を保っていることが分かります。

    


また矩形波もぴたりと一致し、両出力の周波数特性がそろっているのが分かり、ゲインのある位相反転回路として、かなり実用性が期待できます。

  


ただしこの回路では作りっぱなしという訳には行かず、オシロを見ながらバイアス1とバイアス2を調整する必要があるため、製作にあたってややメンドウなのが残念です。

今後は2A3や300BのハイパワーPPに向けて、120Vrmsくらいまでドライブできる世界初SLVCCC−PP用ドライバーの実用回路を考えてみます。







実用回路への準備
その2
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